今月の出荷動向:ミノキシジル内服薬が大半を占める
田崎薬品の2026年3月の日本向け出荷データを振り返ると、出荷数量の大半をミノキシジル系の内服薬が占める結果となりました。成分別に見ると、単剤のミノキシジルに加え、フィナステリドとの配合製剤も一定数出荷されており、AGA(男性型脱毛症)治療における「内服薬ニーズ」の高まりを改めて実感しています。
なぜ今、このような出荷傾向が続いているのか。背景を整理してみます。
ミノキシジル内服薬は「国内未承認」にもかかわらず、なぜ使われているのか
ミノキシジルは、もともと高血圧治療薬として1960年代にアメリカで開発された成分です。その副作用として多毛が確認されたことから、外用育毛剤への転用が進み、1980年代以降はAGA治療のファーストライン薬として世界中に普及しました。
日本では外用薬(頭皮塗布タイプ)は正式に承認されており、薬局でも購入できます。一方で内服薬としてのミノキシジルは現在も国内未承認です。AGAを対象とした大規模な国内臨床試験が実施されておらず、承認申請がなされていないことが主な理由です。
図1|外用薬と内服薬の位置づけ比較
| 外用薬(ミノキシジル) | 内服薬(ミノキシジル) | |
|---|---|---|
| 国内承認 | ✓ 承認済み | ✗ 未承認 |
| 皮膚科学会推奨度 (2017年版) |
A(強く推奨) | D(推奨しない) |
| 処方形態 | 保険外・自由診療 | 自由診療のみ(医師判断) |
| 入手方法 | 薬局でも購入可 | クリニック処方のみ |
| 副作用リスク | 比較的軽微 (頭皮症状が中心) |
全身性あり (動悸・浮腫・多毛など) |
| 欧米の動向 | ファーストライン治療として定着 | 2025年専門家コンセンサスで有効性・安全性を認定 |
出典:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」をもとに田崎薬品作成
にもかかわらず内服薬が流通しているのは、医師が自由診療の範囲で処方できるという仕組みがあるためです。日本では承認外の薬であっても、医師の判断のもとで処方することは違法ではありません。AGAクリニックを中心に、欧米での使用実績や最新の研究知見を踏まえた上で処方が行われています。
欧米の動向を見ると、2025年に発表された脱毛症専門家によるコンセンサスレポートでは、ミノキシジル内服薬は適切な用量管理のもとで安全に使用でき、外用薬に次ぐ有効な治療法として位置づけられています。こうした国際的なエビデンスの蓄積が、日本の医師の処方判断にも影響を与えていると考えられます。
自由診療AGA市場の拡大が、調達ニーズを押し上げている
調達需要の増加を理解するには、日本のAGA治療市場の構造変化を把握する必要があります。
図2|AGA治療薬の調達ニーズが増加する背景
背景要因
約半数が薄毛を悩む
(2025年コンセンサス)
前年比倍増(2024年)
医師の処方判断を後押し
未承認でも自由診療での処方は合法
AGAクリニック数が実質増加
オンライン診療で全国商圏化
処方薬の調達ニーズ増加
品質・安定供給が問われる
田崎薬品への調達相談
GDP準拠・PIC/S GMP製品を安定供給
出典:厚生労働省「オンライン診療に関するアンケート集計結果」、日本経済新聞(2025年7月)をもとに田崎薬品作成
ひとつの大きな要因はオンライン診療の普及です。AGA治療は継続的な服薬が前提となるため、「診察→処方→薬の配送」まで完結するオンラインモデルとの相性が非常に良い領域です。厚生労働省の調査によれば、オンライン診療の実施回数は2024年7月に約14.5万回と前年から倍増しており、20〜30代の利用が伸びています。AGAの主な患者層と重なるこの年代の利用拡大は、クリニック数の実質的な増加と処方薬の調達ニーズ増加に直結しています。
もうひとつは市場規模そのものの大きさです。30〜40代男性の約半数が薄毛に悩みを抱えているとされており、その潜在的な市場規模は1兆円超とも試算されています。しかし実際に治療に踏み切っている割合はまだ低く、「未受診の潜在患者層」が大きい市場です。オンライン診療の利便性向上がこの潜在層を少しずつ掘り起こしており、継続的な需要増につながっています。
フィナステリドとの配合製剤が増えている理由
今月の出荷データで注目されたのは、ミノキシジルとフィナステリドの配合製剤も一定数出荷されている点です。
この2剤を組み合わせる理由は作用機序の違いにあります。ミノキシジルは毛母細胞に直接働きかけて発毛を促進する薬であるのに対し、フィナステリドはAGAの原因ホルモン(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制する薬です。両者は作用点が異なるため併用が可能であり、それぞれ単独で使うよりも高い治療効果が期待できるとされています。
配合製剤としてまとめることで患者の服薬負担が軽減されるため、処方・調達の両面でニーズが高まってきています。
調達における品質管理の重要性
ミノキシジル内服薬が国内未承認であるという事実は、調達品質の管理が特に重要になることを意味します。
個人が入手する輸入品とは異なり、医療機関が患者に処方する薬は、成分の純度・含量・保管温度など、厳格な品質基準を満たしている必要があります。田崎薬品では、GDP(医薬品適正流通基準)に完全準拠した流通管理のもと、PIC/S GMP認定工場で製造された製品を日本の医療機関にお届けしています。
「安く調達できればよい」ではなく、「患者に安全に処方できる品質の製品を、適切な流通経路で調達できるか」という観点が、医療機関としての信頼につながります。
まとめ:出荷動向から読み取れること
今月のデータが示す「ミノキシジル内服薬の調達ニーズ増加」は、一時的な現象ではなく、日本の自由診療市場の構造的な変化を反映していると考えています。オンライン診療の普及、大きな潜在患者層、欧米発のエビデンス蓄積——これらの要因が重なることで、今後もAGA治療薬の調達需要は底堅く推移することが予想されます。
田崎薬品では、毎月の出荷動向をこのコラムで継続的にお伝えしながら、日本市場に向けた医薬品の安定供給に取り組んでまいります。
AGA治療薬をはじめとする医薬品の調達について、ご質問・ご相談はお問い合わせページよりお気軽にどうぞ。
参考情報
| # | 情報源 | 内容 | URL |
|---|---|---|---|
| 1 | 日本皮膚科学会 | 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(PDF) | https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/AGA_GL2017.pdf |
| 2 | Minds ガイドラインライブラリ | 上記ガイドラインの選定・評価情報 | https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00458/ |
| 3 | 厚生労働省 | オンライン診療の適切な実施に関する指針(各年度版) | https://www.mhlw.go.jp/stf/index_0024_00004.html |
| 4 | 日本経済新聞(2025年7月) | オンライン診療が2024年7月に前年比倍増、20〜30代の利用伸長 | https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA079QS0X00C25A7000000/ |
| 5 | 厚生労働省(調査資料) | オンライン診療に関するアンケート集計結果(自由診療でのAGA利用実態含む) | https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000504416.pdf |
本記事に記載の出荷データは田崎薬品の実績に基づくものです。医薬品の使用にあたっては必ず医師の判断のもとで行ってください。